毎日いろんな営業先に行って、いろんな話をします。
天気の話、地元のラーメン屋の話、息子の進路の話、決算の話——営業マンにとって雑談は商談の半分くらい大事な仕事です。だからこそ、浅く広く情報収集は必須。新聞、ニュース、SNS、書籍、なんでも目を通しておかないと話についていけません。
そんな中で、最近よく出てくる話題があります。
NISAです。
日経平均株価が6万円を超えたあたりから、空気がガラッと変わりました。営業先で「最近、株どうですか?」と聞かれることが急増。新NISAをきっかけに投資デビューした人たちが、含み益でホクホクしてる。あの頃のご機嫌な顔、何人見たかわかりません。
そういう話になるたびに、僕は思い出すんです。
人生で一番、株でやられた瞬間を。
それが2020年春の、コロナショックでした。
全部、下がった
実は僕、NISAが始まった頃からずっと株をやっています。
最初は教科書通り、コツコツ積立——なんてことは一切やらず、いきなり個別銘柄でハイリスク・ハイリターンの取引にのめり込みました。指数連動の投信なんて退屈で、僕には合わなかったんです。
そして2020年、コロナがやってきました。
正直に言います。コロナショックの何が怖かったって、逃げ場がなかったことです。
普段の暴落なら、こっちのセクターは下がってもあっちは耐える、みたいな分散の効き方をするんですが、コロナの時はそれが効きませんでした。航空も、観光も、外食も、金融も、ハイテクも——全部、一斉に下がる。
僕のポートフォリオは個別株でゴリゴリ攻めてたので、ダメージはモロでした。チャートを開くたびに含み損が深くなっていく。朝起きてスマホ見るのが怖くて、布団から出られなかった時期です。
「これ、どこまで下がるんだ?」
「もう全部売って逃げた方がいいのか?」
頭の中はパニックでした。SNSを見れば「リーマン超え」「世界恐慌再来」みたいな見出しが躍ってる。買い増しする勇気もなければ、損切りする決断もできない。ただ画面の前で固まっているだけの日々でした。
追い詰められて、初めて「ショート」を入れた
そんな中、藁にもすがる思いで初めて触ったのがショート(空売り)でした。
ショートというのは、ざっくり言うと「株価が下がると儲かる取引」です。普通の株式投資は「安く買って高く売る」で利益を出しますが、ショートはその逆。「高い時に売って、安い時に買い戻す」ことで、下落相場でも利益が出せます。
理屈は知ってました。でも、それまで一度もやったことがなかったんです。
なぜか。怖かったから。
ショートは、上昇相場では損失が無限に膨らむ可能性がある(理論上)取引です。教科書には「初心者は手を出すな」と書いてある。だから僕も、これまでずっと避けてきました。
でも、コロナショックの真っ最中、状況は逆でした。世界中がパニック売りで暴落している局面。ここでショートを入れない手はない、と頭ではわかっていました。
震える指で、初めての売建注文を入れました。
パニック売りの時こそ、ショートが刺さる
結果から言うと、取り返せました。完全に、ではないけど、ロング(普通の買い)で食らったダメージの大部分を、ショートで埋め戻すことができたんです。
なぜか。理由はシンプルです。
パニック売りの局面では、株価が「実態以上に」下がるからです。
冷静な相場なら、株価は企業の業績や経済指標を反映してじわじわ動きます。でも、パニックの時は違います。投資家全員が「とにかく現金化したい」と思って一斉に売る。本来の価値より大幅に下回る価格まで叩き売られる銘柄が、続出します。
つまり、ショートを入れる側にとっては、いつもより落ちる勢いが速くて深いということ。短期間で大きな利益が取れるチャンス相場なんです。
僕がショートを入れた銘柄も、思っていた以上に下がってくれました。「ここまで来るか」というラインを軽く突き抜けていく。買い建てで含み損を抱えながら、売り建てで含み益が膨らんでいく——あの感覚は、生まれて初めての経験でした。
トレードが上手い人は、どんな相場でも儲ける
この一件で、僕の中で投資観が大きく変わりました。
それまで僕は、「相場が上がる時に儲ける人」が投資の上手い人だと思ってました。だから上昇相場では強気、下落相場では「耐える」だけ。選択肢が、買うか売るか持ち続けるか、の3つしかなかったんです。
でも、本当に上手い人は違います。
上昇相場では、しっかり買いで取る。
下落相場では、ショートで取る。
レンジ相場では、回転売買で取る。
つまり、相場の方向に合わせて、自分の戦い方を変えている。「相場が悪いから今は休む」じゃなくて、「悪い相場には悪い相場の取り方がある」ということを、当たり前のように知っているんです。
これに気づいてから、僕の中で投資に対する見方が180度変わりました。
日経6万円時代、ご機嫌な人たちへ
冒頭の話に戻ります。
日経平均が6万円を超えて、NISAデビューした人たちがホクホクしてる——この光景、僕は冷ややかな目で見ているわけじゃありません。むしろ、投資人口が増えるのは良いことだと思っています。
ただ、ひとつだけ言わせてください。
今の相場が、永遠に続くわけじゃないということ。
2020年の春、僕みたいなNISA初期からのベテラン勢でさえ、ただただ画面を見て凍りついていました。あの時、ロングしか知らなかった僕は、本当に苦しかった。
もし今、新NISAで投資を始めた人がこれを読んでいたら、覚えておいてほしいんです。
「下がる時の戦い方」を、上がってる今のうちに学んでおく。
これだけで、次に来る暴落のときの生存率が、まったく変わります。
コロナショックで学んだこと
長年やってきて、あの暴落でようやく腑に落ちたことを並べておきます。
- どんな相場にも、儲ける方法はある。下落=悪、ではない
- 道具を増やすことが、生存率を上げる。ロングしか知らないと、半分の相場でしか戦えない
- パニックの時こそ、いつもと逆の発想をする人が勝つ
- 「怖いから触らない」は、知らないから怖いだけ。学べば味方になる
- 結局、勉強し続けた人だけが、相場に残る
特に最後のやつ。投資の世界って、よく「センスがあるかないか」「運があるかないか」みたいに語られがちですが、僕の体感では地道に勉強し続けてる人が、結局は勝ち残ってる気がします。
ショートだって、本を一冊読めば仕組みはわかります。デモトレードで練習すれば、ある程度は感覚もつかめる。それをやるかやらないか、だけなんですよね。
まとめ
- 営業マンは日々いろんな話をするので、浅く広く情報収集が必須
- 日経6万円超えでNISAデビュー組がご機嫌な今、20年春のコロナショックを思い出した
- NISA開始からずっと個別株でハイリスク・ハイリターンをやってきた
- コロナショックで全銘柄が下がり、人生最大級の含み損を抱えた
- 追い詰められて初めて「ショート」に手を出した
- パニック売り局面ではショートが刺さりやすく、損失の大部分を取り返せた
- どんな相場でも稼げる人は、相場に合わせて武器を変えている
- 上がってる今こそ、「下がる時の戦い方」を学んでおく価値がある
あの時、震えながらショートを入れた経験は、今でも僕の中で財産になっています。
もしあなたが今、「相場が下がってきて怖い」と思っているなら——怖いのは、選択肢を一つしか持っていないからかもしれません。
道具は、増やせます。
※投資は自己責任で。本記事は個別銘柄や個別取引を推奨するものではありません。


